J.S. バッハ「インヴェンション第1番」解説と当時の演奏法
ギターアレンジと装飾音を中心にInvention 1
装飾音:バッハ自筆と筆写された装飾音表
「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハのためのクラヴィーア小曲集」には、バッハの手により装飾音の説明がされている装飾音表が書かれています。これを分かりやすくしたものと合わせて掲載します。この装飾音表は、バッハのすべての装飾音が書かれているわけではなく一部です。概略と書いてある通り、全くこの通り奏されるわけでもありません。今回は、インヴェンション第1番の中に書かれている(トリルもしくはプラルトリラー)と
(モルデント)を中心に述べていきます。


バッハはこの装飾音表を書く以前に、フランス人ジャン・アンリ・ダングルベールの「クラヴサン曲集」(1689年)の中から装飾音表を筆写しています。これはフランクフルト大学図書館が所蔵していて、この装飾音表の他にニコラ・ド・グリニーの「オルガン曲集」(1699年)とシャルル・デュパールの「6つのクラヴサン曲集」(1701年)の筆写も残されています。(※19)グリニーもデュパールもフランス人です。
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楽譜へのリンク先
ジャン・アンリ・ダングルベール「クラヴサン曲集」
IMSLP
IMSLP. Pièces de clavecin (D'Anglebert, Jean-Henri).
バッハによる筆写
フランクフルト大学図書館
Universitätsbibliothek Frankfurt am Main. "Musikhandschriften / Mus Hs 1538 - Premier livre d'orgue".
※19、東川清一.「フランスの音楽」.角倉一朗監修.『バッハ事典』.音楽之友社,1993,p.421-423.によると、シャルル・デュパールの「6つのクラヴサン曲集」は1709/1712年ころ、ニコラ・ド・グリニーの「オルガン曲集」は1709-1712年ころ、ジャン・アンリ・ダングルベールの「クラヴサン曲集」の中の装飾音表は1710-1712年ころ、の筆写しであろうと言われています。