A.M. ルモワーヌ《教則本》グリッサンド解説
小林荘友ギター教室

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A.M. ルモワーヌの「教則本」におけるグリッサンドの解説Glissé

このページでは、アントワーヌ・マルセル・ルモワーヌ(1763-1817)の「初心者用新ギター教則本」(1799)と「リラまたは6弦ギターのための新教則本」(1805?)におけるglissé(滑り)の解説(フランス語原文と日本語訳)を掲載しています。

A.M. ルモワーヌの書いたこの2冊の教本の表紙を見ると、本の著者であり、ギター教授や楽譜と楽器の販売もしていたことが書かれています。ギターを教えて教本も書き自分で販売していたようで、著作権があることやパリの住所も書かれていて興味深いです。
また、F. カルリから「3つのギターソナタ Op.21」を献呈されています。

出典1

Lemoine, Antoine Marcel. Nouvelle Méthode de Guitarre à l'usage des commençans, divisée en trois parties. Paris, Lemoine, p.19
A.M. ルモワーヌ「3部に分かれた初心者用新ギター教則本」(1799)

原文(フランス語)

Le glissé se fait en passant d'une note a l'autre avec le même doigt sur la même corde il faut lorsque le glissé se trouve avoir une note intermédiaire soit en montant soit en descendant d'une note a l'autre, comme du (Fa) dieze au (La) naturel & passer très légèrement sur les deux touches qui les sépare a fin d'éviter par la de faire enten dre le (Sol) naturel et le (Sol) dieze sans cependant quitter la corde, car a lors la vibra tien qui sert a faire la seconde note n'aurait plus lieu si l'en êtait le doigt; le glissé double se fait de même et l'en peut y joindre une note de basse avec pour vu qu'elle soit a vide (Voyéz l'ex: suivant)

Exemple du glissé en montant et en descendant

A.M. ルモワーヌ「3部に分かれた初心者用新ギター教則本」19ページ

Suitte de l'exemple précédente

A.M. ルモワーヌ「3部に分かれた初心者用新ギター教則本」20ページ

Glissé double

A.M. ルモワーヌ「3部に分かれた初心者用新ギター教則本」20ページ

日本語訳

glissé(滑り)はある音が別の音へ、上行や下行の中間を持つことが見られるときに、ある音から別へ同じ弦の同じ指で移動することで行われます。ファのシャープからラのナチュラルへのようなとき、弦から離れないにもかかわらず、ソのナチュラルとソのシャープが聞こえないように2フレットの上をとても軽く通ります。というのはその時、もし指がそう(その原因)であれば2番目の音を出す振動はもうないでしょう。glissé double(2重滑り)も同様に行い、開放弦の低音の音符を加えることができます(次の例を見てください)。

上行と下行のglissé(滑り)の例

A.M. ルモワーヌ「3部に分かれた初心者用新ギター教則本」19ページ

前にある例の続き

A.M. ルモワーヌ「3部に分かれた初心者用新ギター教則本」20ページ

glissé double(2重滑り)

A.M. ルモワーヌ「3部に分かれた初心者用新ギター教則本」20ページ

出典2

Lemoine, Antoine Marcel. Nouvelle Méthode de Lyre ou Guitarre a Six Cordes. Paris, Lemoine, p.12
A.M. ルモワーヌ「リラまたは6弦ギターのための新教則本」(1805?)

原文(フランス語)

DU GLISSÉ

Le glissé, se fait en passant d'une Note à l'autre, avec le même doigt il y en à de deux sortes: Le Glissé simple, et le Glissé double (voyez les deux exemples) lorsque le glissé se fait par tierce il faut éviter autant qu'il sera possible de faire entendre la Note qui se trouve entre la première et la troisieme, on peut-y joindre, ane Note de Basse si l'on veut, pourvu quelle soit à vide.

DU GLISSÉ SIMPLE.

A.M. ルモワーヌ「リラまたは6弦ギターのための新教則本」12ページ

DU GLISSÉ DOUBLE.

A.M. ルモワーヌ「リラまたは6弦ギターのための新教則本」12ページ

日本語訳

滑り

glissé(滑り)は、ある音が別の音へ同じ指で移動することで行われ、2つの種類があります。Glissé simple(1つの滑り)とGlissé double(2つの滑り)です(2つの例を見てください)。3度のglisséの時、1番目と3番目の間にある音は、できるだけ聞こえないようにしなければなりません。もししたいのであれば、開放弦の条件で低音を加えてもよいです。

1つの滑り

A.M. ルモワーヌ「リラまたは6弦ギターのための新教則本」12ページ

2つの滑り

A.M. ルモワーヌ「リラまたは6弦ギターのための新教則本」12ページ

解説

A.M. ルモワーヌの教則本ではグリッサンドをglissé(滑り)と表現しています。中間音をできるだけ聞こえないようにするけれど、指を離さずに行うという説明です。「もし指がそう(その原因)であれば2番目の音を出す振動はもうないでしょう。」という説明は、指を離さずに2番目の到達した音を出すことだと思います。
中間音を聞こえないように、2番目の音を滑って出すには速く滑らせる必要があるため、ルモワーヌのグリッサンドは軽く速く、そして2番目の音は弾かずに音を出したと考えられます。



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